

左:北日本放送株式会社 技術局 技術部 山谷 富明氏、右:同 技術部 坂又 晶氏
北日本放送株式会社 (富山県富山市)
最先端技術への取り組み
最先端技術とそのワークフローに対する取り組みの速さという点において、富山県富山市の北日本放送株式会社はトップクラスであると言えるでしょう。地上波デジタル放送を開始したのは2004年10月で、民放ローカル局としては全国初。2006年1月にはすべてのデジタル放送機器の整備が完了し、これはキー局も含めて民間放送として全国初でした。
そんな北日本放送がAvid製品を使い始めたのは2002年。リニアからノンリニアへ移行するタイミングで、Avid DS (当時)1式とAvid Media Composer Adrenaline (当時)2式を導入したことがきっかけでした。
「地上波デジタルにあわせて、リニアからノンリニアへの移行を行いました。Avid DSとMedia Composerを選んだのは、その時点でHD編集が間違いなく動いていたのがこれらのシステムだったからです」(北日本放送株式会社 技術局 技術部 山谷 富明氏)
つながるべきものをつなげる
2005年には、ニュースのノンリニア化をAvid NewsCutterで実施しました。
「この段階で、『この先はすべてノンリニアで行く』と決めていて、ノンリニアである以上、『全員で素材を共有しながら完パケを作る』という形を目指すべきだと考えていました。そして当時、共有サーバー Avid Unity(当時)を使った素材共有や素材管理ができ、さらに送出サーバーまでを含めたトータルソリューションを提案頂けたのはAvidだけでした」(山谷氏)
株式会社ニシコン製報道支援システム「JAPRS」とNewsCutterとの連携を取る、JNEWSの前身となるシステムを導入 、2012年度末に報道制作を統合するファイルベースワークフローを実現しました。
「なにか問題があったわけではなく、ファイルベースワークフローである以上、当然連携すべきだと考えたからです。素材の管理がテープの時代はアーカイブされないままディレクターが手元に溜め込んだりしていて、他の人にはわからない状態になっていたのも、ファイルでやりとりするにあたって改善すべきだと思いました」(山谷氏)
映像フォーマットはXDCAM 50、メディアはSxSカードを採用しました。
「SxSならディレクターが手元に溜め込んでおくことができないからです。ライブラリーまで保存しないと不安になるので、強制的に流すような仕掛けを作りました。最初は細かいトラブルはありましたが、『やっていることは間違っていない』と納得してもらいました。新しいワークフローに対する戸惑いや不満は、現場ではあったとは思いますが…(笑)」(山谷氏)
「この方法はとにかく速かった。編集に関しては速さを重視していたので、新しいフローに対する戸惑いより、速さに対する満足感のほうが勝りました」(技術部 坂又 晶氏)
2012年の更新においては 報道だけに留まらず、制作でも同じシステムを使用するようになります。
「ソリューションは統一すべきだと思ったからです。なので、この時点で制作もJAPRSの取材IDを使っています。報道と制作の違いは、ベースになるものがニュース原稿か台本かの違いだけです。結果として制作も送出サーバーへ 送信ができるようになり、取り込みもスムースになりました」(山谷氏)
編集ブース
アイデアを形に
2019年には、代理店である伊藤忠ケーブルシステム株式会社により、JNEWSも含めて機材を更新。この新しいバージョンには、これまでJNEWSを使ってきて山谷氏が気づいたアイデアが形になった新機能が含まれていました。
「当初のシステムでは、素材取り込みは編集機で行っていました。後にJAPRSで取り込む形になりましたが、これだと編集機で改めてコピーしなければならなくなる。これを改善するために、JNEWSで取り込んでJAPRSと編集機の両方に素材を送る形を提案しました」(山谷氏)
取り込み方法が変わることについても、もはや混乱はありませんでした。
「現場のエディターたちはもう、この仕組みや考え方に慣れています。取り込み場所が変わることによる多少の戸惑いはあったようですが、違和感なく移行できましたし、大きな不満はないようです」(山谷氏)
さらに、収録サーバーとして更新したFastServe | Ingestの素材を自動的にアーカイブする機能も追加されました。
「個人的に、これはお気に入りの機能です。前のバージョンではJAPRSがインジェストを握っていたので、手動でアーカイブしなければなりませんでした。新バージョンではインジェストが自動的に入っていくので、助かっています」(坂又氏)
現在、北日本放送では報道用に6式 、制作用に4式のMedia Composer(うち2式は4K制作用)と、報道制作共用のMedia Composerが7式、VideoSatelliteとして稼働しているMedia Composer + Pro Toolsが1式ずつの合計19式のクライアントが、240TBのAvid NEXIS | E4に接続され、MediaCentral | Production ManagementとJNEWSによってJAPRSと連携管理されています。
「今、北日本放送制作の番組は、ほぼすべての番組をこれで制作しています。報道も制作もです」(山谷氏)
アーカイブ素材はLTOに保管され、JNEWSでリトリーブすると、対応するLTOの番号が表示されるようになっています。
「2012年以前まではすべてテープで保存していて、そこには多少の素材とOAが含まれていました。2012年以降は、保存すると決めたものについてはすべての素材を保存しています」(山谷氏)
現在、北日本放送のシステムは下図のようになっています。FastServe | Ingestによって収録された映像とJNEWSのインジェスト機能によって収録されたファイルは、Vantageによってプロキシーが作成され、JAPRS端末からプレビューできるようになっています。項目表から自動作成されたMedia Composerのシーケンスをベースに編集されたシーケンスはHarmonicのOA送出サーバーに転送され、PanasonicのOTCからの指示で順次送出されていきます。このときJNEWSはこの素材を他の送出サーバーにも自動転送、さらにアーカイブ用のサムネイル、プロキシーを生成した上で、ハイレゾと一緒にNASに転送し、アーカイブシステムに送ります。
概念図
MediaCentral | Production Management、JNEWS、Avid NEXIS | E4等が収められたシステムラック
「その違いがとても大事なのです」
20年近くにもわたってAvidのソリューションを使い続けた山谷氏は、機材更新の時期には必ず他社システムと比較検討し、その時点で最も信頼に足るシステムを探し続けています。それでもなお、今日まで山谷氏がAvid以外のソリューションを採用することはありませんでした。
「Avidのソリューションは信頼できるからです。少なくとも2012年の時点において、他社システムでAvidと同等のものはありませんでした。2019年には他社システムでも同等の機能を持つものが現れていましたが、細かい部分で足りていませんでした。それは、現場のエディターは気づかないかもしれないような部分です。でも、その違いがとても大事なのです」(山谷氏)
将来的な展望についても意欲的です。
「富山県内はそれほど大きなエリアでもないので、そのことだけを考えれば、リモート編集がどこまで有効かはわかりません。しかし、昨年からの新型コロナウイルスの蔓延によって、リモート編集のニーズが上がっていることは確かです。できるようにしておけば、他にも有効な使い方ができるかもしれない。リモート編集については真剣に考えてみたいと思っています」(山谷氏)