

株式会社仙台放送(宮城県仙台市)
株式会社仙台放送 技術局 映像制作部 西崎 光一氏
途中にメディアを挟まないフロー
「もはやJNEWSなしでの番組制作は考えられません」
株式会社仙台放送 技術局 映像制作部の西崎光一氏は、そう言って笑顔を見せました。
宮城県仙台市に本社を置く株式会社仙台放送の報道部が最初に使い始めたAvid製品は、2004年のAvid NewsCutter(当時)でした。その後、2013年には株式会社ニシコン製報道支援システム「JAPRS」との連携を開始すべく、Avid Interplay(当時)と初期バージョンのAvid JNEWSを導入、同時に共有サーバーをAvid Unity(当時)からAvid ISIS(当時)へ更新しました。
「この当時は、取材予定との連携というよりは、送出サーバーとの連携が主眼でした。実際に稼働してみると、送出サーバーへの転送時に編集機が使えなくなるのが多少ストレスだったようですが、それよりもテープに書き出さなくていいというメリットのほうが大きかった。エディターたちは、それまでは素材を『持っていった』と言っていたのですが、このシステムを導入して以降、素材を『投げた』と言い出した。相当にインパクトがあったのだと思います」(西崎氏)
さらにその後、2020年にはシステムを更新。Avid NEXISやAvid MediaCentral | Production Managementへの更新と同時に、JNEWSも更新しました。この2020年のシステムには明確な目標がありました。すなわち「人もモノも動かさない」ということです。
「例えばテロップ作業や完パケ納品のような工程のために、『一旦素材をメディアに書き出す』という作業をできるだけなくしたかった。一度ファイルが取り込まれたら、最後までファイル転送だけで済むようにしたいと思ったのです」(西崎氏)
この新システムでは、JAPRSの取材項目との連携もできるようになりました。
「JNEWSのインジェスターで取り込むと、取り込んだ素材は自動的にMediaCentral | Production Managementに振り分けられ、Avid Media Composerのプロジェクトが作成されます。今までマニュアルでやっていたこれらの作業が自動化できたのは、似たような取材があったときの素材の判別のしやすさの向上につながっています」(西崎氏)
このインジェスターは、仙台放送のワークフローに大きな役割を果たしています。
「仙台放送では素材はカメラマンが取り込むことが多いのですが、単発のカメラマンさんでさえすぐに使い方を覚えてくれました。とにかくとても使いやすいのです」(西崎氏)
素材の入り口を徹底的に効率化
回線収録にはAvid FastServe | Ingestを導入。CAPIで収録をコントロールし、収録されたものはJNEWSの取材予定と自動的にリンクされます。
また、JAPRSはリモートで局外からアクセスできるようになっており、取材時に入手した映像ファイルはJAPRSの取材予定に添付できるようになっています。ファイルが添付されるとJNEWSがそれを感知し、Telestream Vantageにファイルを転送。Vantageは指定されたフォーマットに変換しMediaCentral | Production Managementにチェックインします。ENG素材はVantageがプロキシーを作り、局外からJAPRS端末でプレビューできます。
支局からXDCAMで転送されるファイルや視聴者から提供される映像もJNEWSが感知し、自動的にMediaCentral | Production Managementのフォルダーに振り分けます。
「これらの機能は、株式会社ニシコンとAvidの両方に機能をリクエストして実現できました。とにかく中間でメディアを使いたくなかったので。結果的に大きなメリットを感じています」(西崎氏)
収録用端末とCAPI画面
制作部へ拡張
さらに同じ年、それまで他社製編集システムを使用していた制作部の編集機材もMedia Composerへ更新されました。
「制作スタッフは、それ以前にもMedia Composerをベースにした報道の編集システムを時々使っていたので、Media Composerについてはある程度わかっていました。ディレクターも編集機を使うことがあるのですが、それもシステムインテグレーターである伊藤忠ケーブルシステム株式会社の手厚いサポートのおかげで混乱なく移行できました」(西崎氏)
ここでも大きな役割を果たしたのはインジェスターでした。
「制作の場合JAPRSとの連携はしませんが、取り込んだ素材がフォルダー分けされるのはやはり効果が大きい。Avid Pro Toolsで使用するMA用の音素材も含め、あらゆる素材はすべてここから取り込んでいます。報道も制作も使うので、インジェスター端末は両部署の真ん中に置きました。ここに人が溜まるのがイヤなので、あえて椅子のない机に設置しました」(西崎氏)
インジェスター端末
この方法に変わった直後、エディターたちには若干の戸惑いもあったようです。
「それまでは編集機で取り込んでいたので、取り込む場所が別にあることに戸惑いはあったようです。しかし、使い始めていくうちに、取り込みを仕掛けたらすぐどこかに行ける、編集機を塞ぐことがないなどの多くの利点がわかってもらえた。管理する側としても管理しやすいし、毎日、フル稼働です。このフローはもう止まらないですね。」(西崎氏)
概念図
編集ブース
現在仙台放送では、このシステムで社内制作の番組の85-90%を制作しています。システム全体を見たとき、このシステムは「オペレーターの自立につながるシステムだった」と西崎氏は語ります。
「自分で考えて自分で準備できるようになったようです。要するにわかりやすいということでしょう。管理する側としても、私が呼ばれる回数が1/10くらいになりました。以前は24時間365日、常に緊張していましたが、今はほとんどありません」(西崎氏)
「次は出口」
今年からは、MediaCentral | Cloud UXの使用を開始しました。
「まだ使い始めたばかりで社内からのアクセスだけなのですが、たとえば回線収録中素材のチェックなどは、これまではプレビューモニターの前に張り付いて見ていなければならず、プレビュー場所は狭いので少々オペレーションしにくかったのですが、今は記者が自分の場所でゆったりとプレビューできています」(西崎氏)
今後は、このMediaCentral | Cloud UXの活用がテーマです。
「これまではメディアの入り口を中心に効率化してきましたが、今度はMediaCentral | Cloud UXを活用した『メディアの出口の効率化』を考えようと思っています。外からアクセスできるようにして、完パケの確認ができるようになったら便利ですね。また、SNS配信の機能にもとても興味があります。
今回のJNEWSの導入は、感覚としては機械の中に人が2-3人入っているイメージで、人件費の意味では大きなコストダウンになりました。もはや、なくなることは考えられません」(西崎氏)