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アニメーション制作スタジオが多く集まる高円寺に、2006年にソニーPCL株式会社が開設したアニメーション映像編集に特化した高円寺スタジオがあります。テレビ・シリーズのアニメ『鬼滅の刃』並びにDolby Vision/Dolby Atmos®でも公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』なども手掛けている同スタジオで編集を担当する神野学氏に、アニメーションの編集の流れの中で、Avid Media Composerをどのように活用しているかを伺いました。

 

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ソニーPCLが、編集およびDolby Vision/Dolby Atmos®化を手掛けた
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』

 

神野氏に聞くMedia Composerでのアニメーション編集

「私はFilm Composerの頃にAvid製品を使用し始め、ユーザー歴も長いことで愛着もあります。高円寺スタジオが2006年に作られる際にノンリニア機材を検討しましたが、以前から当社西五反田のスタジオ(クリエイションセンター)での導入実績もあり、かつ編集システムとして長尺の映像編集を安定して行なえる、という条件を踏まえてAvid Symphonyを導入しました。」

 

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神野学氏(アドバンスドプロダクション2部・担当部長)

 

その後、2008年には「高円寺スタジオ」のリニア編集室もMedia Composerに置き換え、同スタジオ内での全ての編集業務をMedia Composerで行なっているとのことです。

「アニメーション編集では、編集中に素材の差し替え、リテイクが頻繁に発生します。絵コンテにシンプルなモーションを付けたものから、本撮と呼ばれる完成バージョンまで、多い場合は1カットを10回程差し替えることもありますし、完成カットであってもクオリティアップのため子細な部分の修正で追加の差し替えを行なうことがあります。劇場版アニメーションでは使用するクリップ数は2000カット程になることもあり、リテイクなどを含めると1万クリップ近くを管理することになるので、素材のテイク管理はアニメーションではとても重要になります。」

 

TVアニメ『鬼滅の刃』第1弾PV 2019年4月放送開始

 

大量の素材をリンク状態で扱うと、万が一参照しているムービーが意図せず別のテイクに差し変わってしまった場合に、確認がとても煩雑になる可能性があります。そういった場合、どのような対応をなさっているのでしょうか?

「当社では素材をリンクするのではなく全てDNxコーデックでインポートしています。それによってビンでクリップが作られた時のタイムスタンプでのテイク管理が容易になり、素材ファイル名が重複することがあっても安心して素材管理が行なえます。これはとても重要な考え方で、Media Composerが一貫して採用しているワークフローであり、信頼している部分でもあります。」

高円寺スタジオでは、オフライン編集とオンライン編集を一貫した環境で行なえるのも特徴の1つとなっています。

「Media Composerのオンライン編集時には、当社が自社開発したバンディングノイズを改善するツールの「PixelShake®」をAvidさんから提供して頂いたSDKによってプラグインとして使えるようにしています。また、ある程度のグレーディングはSymphonyカラーコレクションで対応できるため、オフライン編集から続く全く同じタイムライン上でオンライン作業が可能です。また現在もHDCAM、HDCAM-SRでの納品は多く、ベースバンド収録がコンスタントにありますので、従来のベースバンドフローも問題なく行なえます。その時々で他の編集ソフトで作業することもありましたが、長年使っているMedia Composerに戻ってきて使用し続けています。今後もより信頼性の高いシステムの提供を期待しています。」

 

イマーシブ・ミックスに対応した
『405 Immersive Sound Studio』

西五反田にある「クリエイションセンター」には、『408 THX Suite』と『405 Immersive Sound Studio』という2つのMA室があります。『405 Immersive Sound Studio』は、Dolby Atmos ®と360 Reality Audioに対応したイマーシブサウンドスタジオです。

今回は、 サウンドエンジニア/サウンドデザイナーの長谷川有里氏と、 サウンドエンジニア/デザイナー/サウンドスーパーバイザーの喜多真一氏に、イマーシブオーディオ制作への取り組みについて、お話をお伺いしました。

 

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喜多真一氏(左)、長谷川有里氏(右)

 

『405 Immersive Sound Studio』のスピーカーのレイアウトは、9.1.4chですが、これはDolby Atmos対応映画のプリ・ミックスで使うことを想定したためとのことです。

「部屋の広さを考えて、7.1.4chも検討したのですが、映画のプリ・ミックスで使うことを考えると、LWとRWがあった方がいいだろうという判断です。LWとRWがあれば、ここでプリ・ミックスしたものをそのままダビングステージに持って行くことができます。」(長谷川)

 

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405 Immersive Sound Studio

 

実際に、今春公開された『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』ドルビーシネマ版は、この部屋でDolby Atmos化のプリ・ミックスが行なわれました。

「環境音、セリフ、プロップ、音楽と、カテゴリーごとにプリ・ミックスを行ない、7.1.2chのベッドを作ります。そして動かしたい音はオブジェクトとして扱ってパンニングする。今まで手がけてきた5.1chのミックスと基本的なところは変わらないように感じます。」(長谷川)

 

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』公開中PV

 

この部屋のPro Tools | HDXシステムは、HDX カード2枚で構成されており、オーディオ・インターフェースには、Dolby Atmos対応を考慮し、Pro Tools | MTRXが使用されています。「Pro Tools | MTRXに入れ替えて音がガラッと変わりました。とてもクリアになった感じがします。」(長谷川)

 

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オーディオ・インターフェースにはMTRXを使用

 

Dolby Atmos Renderer (レンダラー)に関しては、どうしているのでしょうか?

「最初はDolby Atmos Production Suiteで始めたのですが、その後HT-RMUを導入しました。Pro Tools | MTRXとHT-RMUはMADIで接続しています。」(長谷川)

『405 Immersive Sound Studio』は、360 Reality Audioにも対応しています。

「360 Reality Audioのプログラムやハードウェア設計を手がけているソニーの方々に、スタジオのイマーシブオーディオ対応について話したところ、“ロアースピーカーを追加すれば360 Reality Audioのレギュレーションにも対応する”というご提案をいただきました。リニューアル工事が完了した翌月、2020年1月にロアースピーカーを導入して360 Reality Audioにも対応しました。」(喜多)

「360 立体音響技術群を使用してミックスしたコンテンツですと、オーディオ・ドラマの『夜に駆ける』があります。」(長谷川)

 

ソニーの立体オーディオ・ドラマ『夜に駆ける』はどう作られた? 制作秘話を聞く(マイナビ・ニュース)

 

関連リンク:

 

 

Dolby Atmosは、Dolby Laboratoriesの登録商標です。