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2007年に設立された株式会社富士巧芸社(東京・千代田区)は、映像制作に関わる様々なサービスを提供している会社です。中でも放送業界/映像業界で特に知られているのが人材派遣事業で、編集オペレーターや音声のミキサー、配信専門の技術者など、300名以上のスタッフが在籍。制作現場に経験豊富な人材を派遣し、テレビ局や制作会社、ポストプロダクション・カンパニーから厚い信頼を得ています。

 

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2021年4月、東京・赤坂にオープンしたFK Studio。写真はMA室

 

そんな富士巧芸社は先頃、東京・赤坂にFK Studioと名付けられた自社スタジオを開設。これまでもマンションの一室で編集業務を行なってきた同社ですが、MA室を擁する本格的なスタジオを開設することで、ポストプロダクション事業を本格的にスタートしました。富士巧芸社代表取締役の内宮健氏は、自社スタジオを開設した経緯について以下のように語ります。

「スタッフから“これからは社内で編集もやっていきませんか”という提案があり、銀座のマンションの一室を借りて2017年7月に編集室を開設したんです。編集室を開設するには億のお金がかかると思っていたので、凄く安く始められることを知って驚きましたね(笑)。そしてお客様もそれなりに付くようになり、これだけ需要があるのであれば、もう少し広い部屋でやってみようということになりました。でもMA室に関する知識はまったく無かったので、以前からお付き合いのあるラフトの薗部さん(株式会社ラフト代表取締役/クリエイティブ・ディレクターの薗部健氏)に相談して、プロジェクトがスタートしたんです。それが2020年の3月くらいのことですね。スタジオの規模に関しては、最初から編集室2部屋、MA室1部屋という構成を希望していて、この物件に決めたのは、薗部さんの会社から近く、比較的新しいビルの最上階というところも気に入ったからです」(内宮氏)

 

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欧米ブランド製の椅子や収納家具が置かれるなど、デザインにこだわった内装になっている

 

アドバイザーとしてスタジオ設計に深く関わった株式会社ラフト代表取締役/クリエイティブ・ディレクターの薗部健氏は、「居心地の良い空間を目指して、細かい部分にまでこだわった」と語ります。

「ビルは少し歪な形状なのですが、最上階ということで天高があるのは良かったですね。MA室の施工に関しては、軽量コンクリートを使った湿式で、完全に浮き床構造になっています。デザイン面で意識したのは、ヘビーデューティーさと美しさが両立した“機能美”。天井のレールは垂直に、スタジオ内の吸音板もスクウェアにきっちり取り付けてもらいました。私は美しい場所からしか美しいものは生まれないと思っているんです。ただ飲食ビルということで、消防法の関係で不燃材しか使用できなかったのが大変でした。普通のスタジオで使用している難燃のジャージー・クロスのような素材が使えず、吸音パネルも経産省の不燃認定がある特殊なものしか使えなかったんです。部材の選択肢が少なかったのが苦労した点ですね」(薗部氏)

 

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コントロール・ルーム左手に設けられた収録ブース

 

そしてMA室のメイン・システムとして導入されたのが、Pro Tools | HDXとAvid S3の組み合わせです。Pro Tools | HDXはHDXカード1枚の構成で、オーディオ・インターフェースは汎用性を重視してHD I/Oを導入。ラフト所属の音響クリエイターである髙橋友樹氏は、「気をてらわずに、誰でも使用できるシンプルな構成を目指した」と語ります。

「コントロール・サーフェスに関してはコンパクトなS3を選定しました。複数のパラメーターを同時に触るような作業であれば、大型のコンソールの方がいいのかもしれませんが、このスタジオの規模であればS3がちょうどいいだろうと。プラグインに関しても、Waves PlatinumやiZotope Production Suite、Nugenといった基本的なものばかりで、どこでもファイルを開けるように、変わったものはインストールしていません。中でもよく使うのはiZotopeのRXとNugenで、今やRX無しではMA作業は成り立たなくなってますね。一方のNugenは、ラウドネスの監視/管理で使用していますが、最近は直接テープに戻すという作業が無くなっているので、ファイル・ベースで使うことが多いです。映像に関しては、Pro Toolsのビデオ・トラックで再生するのが基本になりますが、Video Satelliteでも再生できるようになっています。最近はMAが最終的な試写を兼ねることが増えているので、僕が作業するときはVideo Satelliteで再生することが多いですね」(髙橋氏)

 

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作業の中心となるPro Tools | HDX

 

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コントロール・サーフェスはコンパクトなS3を導入

 

各部屋のローカル・ストレージとしてはSSDまたはHDDのTB3RAID、共有サーバーとしてはSynologyの16TBのNASを使用しているというFK Studio。フロアには12G-SDIのネットワークが敷いてあり、社内のLANは10Gbps、インターネットは2GbpsのNURO Bizと高速なネットワーク環境が整備されているのも特徴です。

「最近はローカルのストレージがかなり高速ですし、マシン・スペックも高いですから、プアなネットワークを敷いてしまうと、そこがボトルネックになってしまうんです。インターネットの2Gbpsは、1Gbpsでシステム用とゲスト用を分けているので、来客が多くてもスピードが変化することはありません」(薗部氏)

「コロナ禍でクライアントが作業に立ち会えないパターンも増えているので、ネットワークが高速なのは助かっています。大きなデータでも一瞬でアップされますからね。これが初めての自社スタジオになるわけですが、イメージどおりと言うか、想像していた以上の仕上がりになったと大変満足しています。ここまでのスタジオを作るのはラフトさんの力無しにはできませんでした。これをいいきっかけにして、スタジオをさらに増やしていけたらいいですね」(内宮氏)

 

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写真手前左から、株式会社富士巧芸社代表取締役の内宮健氏、
株式会社ラフト代表取締役/クリエイティブ・ディレクターの薗部健氏、
写真奥左からROCK ON PROの沢口耕太氏、株式会社富士巧芸社の洲脇陽平氏、
株式会社ラフトの髙橋友樹氏、ROCK ON PROの岡田詞朗氏

株式会社富士巧芸社
FUJIKOOGEI Inc.

 

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