8K/HDR 『Three Trees』
[出演] 白石 聖[Music] 小瀬村 晶
[監督・編集・グレーディング] 矢野 数馬 (カンテレ)
詳細はこちら: Three Trees
日本の 関西テレビ放送 は、次世代の超高精度ビデオテクノロジーの最前線で積極的に取り組んできました。同社のUHD-worksチームは、最初の超高精細コンテンツ制作作品8K HDRショートフィルム 「つくるということ」 は、2018年にニューヨークフェスティバルTV&フィルム・アワードで金賞を受賞しました。
続いて、8K HDR作品第二弾のショートフィルム 「Three Trees」 は、深い表現力と凛とした存在感で、抽象的な詩の世界に彩られ、見る方に記憶に残るような影響を与えています。
「Three Trees」 は、2020年12月にシンガポールで開催されたアジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワードのショートフォーム部門で最優秀賞(Grand Final Winner) に選ばれ、高い評価を得ました。また、民放制作作品で初めて2021年1月からNHKのBS8Kチャンネルで放送されることが決まっています。
「Three Trees」 の監督・編集・カラーグレーディングを務められた関西テレビ放送の矢野数馬氏は、制作ワークフロー全体をEnd-to-Endで行うためにMedia Composerを利用しました。
関西テレビ放送の8K HDRの取り組み

関西テレビ放送は、8K HDR制作をさらに進化させたいと考えていました。テクノロジーが美しい映像を提供するだけではなく、人の想いを人に届けることもできるからです。8Kは遠景(街全景)やクローズアップでスケールとディテールの両方の感覚を提供する撮影をし、HDRはバックライト環境でも、カラーグレーディングを通じて、シーンの広いダイナミックレンジと色域を撮影します。
これらの技術の利点は既に証明されています。フィルムであろうと、HDであろうと、8K HDRであろうと、クリエイターの意志は変わりません。この技術により、クリエイターはより幅広い表現のパレットを利用できるようになりますが、8K HDRメディアを使用するための厳しいメディア制作とストレージ要件は、課題となるかもしれません。
ワークフローには、RAWフォーマットの大型カメラセンサーによる撮影、超高精細デジタル現象と編集、およびカラーグレーディングが含まれます。各工程には、エディターからの極めて高い技術力と強い忍耐力を必要としますが、最終的に、作品に驚異的な深さの創造的な意思をもたらします。
その解像度と色域により、矢野氏が 「Three Trees」 で実現しようとした絵画や写真の芸術的な豊かさにビデオが少し近づけたと言えるでしょう。多くの場合、このような取り組みには複雑な設定が必要となります。AvidのEnd-to-Endのワークフローにより、Media Composerでクリエイティブなビジョンを実現することができました。
機材とワークフロー
「Three Trees」 は、日本初撮影となるRED RANGER MONSTRO 8Kカメラを使用して撮影されました。 ポストプロダクションでは、矢野氏はすべての編集と仕上げにMedia Composer、ビデオキャプチャとモニタリング用にAvid Artist | DNxIQ、Avid NEXIS | E2 SSDストレージは、要求の厳しいカラーグレーディング・ワークフローに必要な高性能かつメディア・スループットを提供するために採用しました。
矢野氏は、DELL 40GスイッチでAvid NEXISに接続し、4Kビデオの4ストリーム再生を実現しているIntel Xeon 18 Core Dual CPUを搭載したDell Precision 7920ワークステーションを使用して、8Kがリアルタイム再生できる環境を構築しています。モニタリング用に8Kのプレビューは、Sony BVM-HX310リファレンスモニターに表示するために、Artist DNxIQで4Kにダウンコンバートしました。また、超高精細映像の美しいディテールを維持するために、編集にAvid DNxHR HQXとDNxHR非圧縮コーデックを使用しています

編集素材は、RED RAWのオリジナル素材からDNxHRの4Kと8Kの素材を現像・トランスコードし作成しました。その素材をAvid NEXIS上に「Original」、「4K」、「8K」と各ワークスペースを作成し同一素材を管理しました。Media Composerは、解像度の異なるプロジェクトであっても同一タイムラインで展開できるため、ワークフローが加速化されました。
プロジェクトに適合した素材にリリンクするだけで、4Kと8Kを瞬時に行き来することが可能なので、4Kオフライン、8Kオンライン編集というワークフローを簡単に実現できます。 また、Media Composerで、RAW現像から編集までを同一アプリケーションで行えるということは、作業をリトライする時も、すぐに元素材に戻ってやり直すことができますので、クリエイティブに集中して作業をすることができます。

Avid NEXIS | E2 SSD と Avid NEXIS Workspaces
現象
REDカメラで撮影したRAWデータを処理するために、矢野氏はMedia Composer REDAMAプラグインを使用しました。カラースペースは、RED WideGamut RGBスペクトルと、ガンマカーブはLog3G10を使用し、ワークフロー全体で予測どおりの一貫した色を実現します。また、設定は任意の選択したクリップを一括で変更できます。
Media Composerで作業して、編集用ファイルをバッチ変換して、ビンから一括で8K Avid DNxHQ HQXデータを生成し、その後オフライン用の4KのDNxHQ HQXも作成しました。 また、カラークリップの機能を利用して、色分けしておくことでタイムラインの素材を瞬時に見分けることができます。ビンの上段がDNxHQ、下段がRAWで、メディアを簡単に追跡することができます。撮影時のメタデータは引き継がれますので編集中に役立ちます。
業界標準の編集システムで編集
Media Composerは、映画やテレビ業界において、長い間選択されてきた編集ツールです。Media Composerは、シンプルで洗練された一連のエディティング機能に加えて、フレームレートや画角などのソース設定を即座に調整できるようにするツールなど、多くの高度な機能が備わっています。
プロジェクト、ソース、ベースバンド、ファイルのエクスポートそれぞれに、マスクマージンを設定することが可能です。何よ りも、最大の魅力は、8K HDR 作品を 1 つのアプリケーション内で最後まで仕上げられるということです。

Media Composerのタイムライン
オフラインからオンライン編集への移行は簡単で、オフライン編集のタイムラインからオンライン素材にリリンクするだけで、本来の画質が得られます。レイヤー構造はもちろん、DVEやカラーグレーディングなどの設定パラメーターもそのまま適用されるため、従来のAAFコンフォーム後のワイプの確認作業などは一切不要となります。他のソフトウェアのAAFでは、フレームレート混在やスローなど、適切に再現されないケースも多く、コンフォーム作業は編集マンにとって大きな悩みの種となっていますが、Media Composerで全ての作業を完結することで、エディターのストレスを軽減しながら、編集速度を向上させることができます。


4K(左)から8K(右)のタイムラインへリリンク
カラー編集
矢野氏は、Media Composerのカラーの機能でカラーグレーディングを行っています。従来はAAFで出力して、カラーグレーディング専用のマシンで行っていましたが、カラーの機能(Media Composer | Symphony Option)を使うことで余分な手間を省いて、Media Composer内ですべてのグレーディング作業を行うことができました。

フィニッシング
矢野氏は、マスターファイル用とNHK BS8Kの放送用のフィニッシング工程をMedia Composerで行いました。マスターファイルはDNxHRを使用してPQ方式の8K HDRを出力しました。放送用は、Media Composerのソース設定でHLG(Hybrid Log Gamma)へ一括変換し、NHK BS8K用の8K HDRフォーマットを簡単に出力することができました。
ピクチャーロックの概念が変わる
オフライン編集、オンライン編集、カラーグレーディング、フィニッシングなど、全てのポストプロダクションを同一システム、同一タイムラインで行うため、ピクチャーロックの概念が大きく変わります。エディティング、DVE、テロップ挿入カラーグレーディングなど、作業の境界線がなくなります。
矢野氏にとって、カラーグレーディング中にオリジナル素材の現像に戻ることも可能だったことを意味します。 その後、グレーディングの仕上がりに応じて、カットの選択や尺変更も容易に行えるため、編集の総合的なクオリティが飛躍的に向上しました。いつでも戻れるという安心感は、編集を創造的かつ大胆に進める上で、矢野氏とUHD-worksチームにとって大きなファクターとなりました。

関西テレビ放送 UHD-works スタッフと女優・白石聖
特別協力・協賛
本作では、日本初撮影となるRED RANGER MONSTRO 8Kで撮影し、編集、カラーグレーディングなどポストプロダクションを、アビッドテクノロジー、フォトロンの多大なる協力を得てMedia ComposerとAvid NEXISで行いました。
矢野 数馬
関西テレビ放送 技術推進本部 制作技術統括局 制作技術センター
1996年関西テレビ放送入社。主に火曜21時連続ドラマのオフライン編集を担当。ドラマ 「神様のベレー帽」 で、日本映画テレビ技術協会の映像技術賞。初演出となった8K HDR 「つくるということ」(2017)が、ニューヨークフェスティバルの金賞、文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品など、多くの受賞を果たす。続く4K HDR 「小夏日和」(2019)がニューヨークフェスティバルの銀賞、8K HDR 「Three Trees」(2019)がアジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワードの最優秀賞を受賞。国内外でUHD-works作品が高く評価されている。