

メディア・ストレージは、今後数年で爆発的な成長が見込まれています。ポストプロダクション業界の仕事、受け入れ、コミュニケーションの方法における最近の変化の多くは、コロナ禍によってもたらされ加速されたものですが、メディアの保存や共有の方法を変えています。
ポストプロダクション業界では、リモート・ワークフロー、クラウド・ストレージ、クラウド・コンピューティングなど、クラウドベース・ソリューションの導入傾向が明確であると、デジタル・ストレージ・アナリストのCoughlin & Associates社 社長のトム・コフリン(Tom Coughlin)氏は、Avidのウェビナーで語っています。メディアチームは、ロックダウンの規制緩和後も、さまざまな場所からコラボレーション作業を続けてきました。リモートへの移行ラッシュは、将来にわたってポストプロダクションに影響を与え、ポストハウスやポスト部門は、今後、どこからでも働けるワークフローのさらなる進化に向けて計画を策定する必要があります。
問題は、もはや社内の階層型メディア・ストレージをアップグレードする必要があるかどうかではなく、既存のオンプレミスのリソースとクラウドベースのサービス・プロバイダをどのように組み合わせれば、最高の柔軟性、セキュリティ、価値が得られるかです。
将来を見据えた分散型ポストプロダクション・ワークフロー
コフリン氏が指摘するように、リモートの制作およびポストプロダクション・ワークフローでは、クラウド上のメディア・ストレージ、クラウドベースの共同レビューや承認ワークフロー、クラウドベースのレンダリングやコンテンツ配信への需要が高まっています。
さらに、リモート制作作業を通じて、制作とポストプロダクションの融合が進み、LEDウォールやリアルタイムでのグリーンバックの入れ替えなど、ポスト・イン・プロダクション技術の利用が増えることで、ポストチームや制作チームがうまく連携するための新しいソリューションが必要になっています。
クラウドのメディア・ストレージとコスト
このような変化により、すべてのオンライン・ストレージを提供するデータセンターの容量は大幅に増加し、オンライン・ストレージ・プロバイダーの選択肢も大きく多様化しました。ポストプロダクション・チームは、それぞれのソリューションの長所と短所を、変化する独自のニーズと照らし合わせて検討しなくてはならないため、選択肢の多さは、意思決定の際に混乱を招くかもしれません。
クラウドベースのメディア・ストレージ戦略を簡略化する1つの方法は、クラウドをアーカイブまたはバックアップ・ソリューションに限定して使用することです。これにより、大量のメディアをダウンロードする際に生じる高価な出力コストを抑えることができます。しかしこれでは、クラウド・ワークフローの変革力を単なるストレージ・コンテナに減じてしまうことになります。
ここで1つ注意して欲しいのは、クラウドベースのメディア・ストレージ・ソリューションが、自社でローカル・ストレージを維持するよりも依然として高価であることです。ポストハウスは、日常的な編集作業がクラウドに移行する中で、ストレージのニーズを資本支出から運用支出に(1回払いを月額払いに移行するなど)転換することがキャッシュフローの制約に適しているか、見極める必要があります。
アップグレードをスピンアップ
クラウドベースのポストプロダクション・ワークフローを導入するもう1つの側面は、ローカルのハードウェアを、もっとパワフルなクラウド上の仮想マシン に置き換えることです。お客様のワークフローの必要に応じて、動的に構成、スピンアップ、展開することができます。
仮想デスクトップ・インターフェースの使用も劇的に増え、オンプレミスのネットワーク・ストレージへも安全にリモートアクセスできるようになりました。コロナ禍で、社内スタッフが自宅オフィスを設置した時、既存のストレージやファイルへのアクセスが必要になりました。このような接続では、自宅のシンクライアント・マシンで作業しながら、メディア・ストレージの性能やレンダリングに関する面倒な作業はすべて、オフィスに戻ってから行えるという利点があります。
マルチクラウドの難点
競合する機能を備えたクラウド・プロバイダーが数多く存在するため、ポストハウスは、複数のソリューションを組み合わせて、最適なソリューションを見つけることができます。クラウド・プロバイダーは、レンダリング機能が優れていたり、AIによるメタデータの抽出が優れていたり、出力コストが低かったりと、それぞれさまざまな特長を提供します。
課題は、複製コストと転送コストを削減しながら、異なるクラウド上にあるさまざまなメディア・ストレージの要件を管理することです。オンプレミスのネットワーク・ストレージ・ソリューションが簡潔に一元化されてないリモートのポストチームを効率的かつコスト効率よく運営ためには、コスト効率の高いメディア管理とプロジェクト・アセットの追跡が不可欠です。
「もっともっと」 を受け入れる:すべてが高度なワークフロー
コフリン氏が強調し、ポストプロダクション業界で無くなることがなさそうなもう1つの傾向は、より多くのピクセル、より多くのギガバイト、より多くのコーデックという、もっともっとの限りない前進です。
高解像度、高フレームレート、高ダイナミックレンジのビデオ・フォーマットにより、性能と容量の両面でストレージへの要求が全体的に高まっています。ポストハウスや部門によっては、例えば、HDから4K、さらにその先に対応するために、既存の集約型ハードウェアやインフラストラクチャの大規模なアップグレードが必要になるかもしれません。また、リモートのコントリビューターがローカルで使用するために配布できる複数の低容量、高性能のストレージ・ソリューションが必要になる場合もあります。
クラウドバースト拡張
クラウドの柔軟性がもたらすメリットの1つは、オンプレミスのストレージが満杯になった時に、ストレージのニーズを素早く拡張できることです。アセットの一部をクラウドに移動してローカルの容量を解放する方法を、一般的にクラウドバーストと呼びます。この緊急対策は、状況に応じて簡単に拡張できるため、ローカルストレージを過剰に用意してアイドリング状態にしてしまうことを回避することができます。
クラウドバーストは、ストレージのニーズが比較的動的な場合には、ローカルストレージを大量に購入するよりも事業コストを削減できるかもしれません。短縮された納期に間に合わせるために、より多くの制作アーティストがリモートで接続して、素早く参加しなくてはならない場合、この機能が役立ちます。
高性能なビデオファイルに取り組む方法や、ネットワーク・ストレージ上にあるそれらのファイルへリモートでアクセスする方法を決める場合、低遅延の予測可能な接続と中断のないビデオデータのストリームが不可欠です。低品質のオンライン接続でビデオ通話をするだけならまだしも、遅延やコマ落ちに悩まされながらの制作作業は、ストレスが溜まります。これらの要件から、ポストプロダクションのメディア・ストレージは独自のものになります。
場所を問わない働き方のこれから
今後、ポストプロダクション業界の傾向が加速する中で、ポスト事業においても長期的なリモート・ファーストの戦略が実施されていくでしょう。今すぐ計画することで、クラウド・ソリューションがもたらす軽快な運用性によるメリットを享受し、安全で生産性の高い接続によって既存のオンプレミスのネットワーク・ストレージへのアクセスを維持しながら、制約を受けずに重要な創作作業を継続することができます。