Avidは、「Pro Tools | MTRX Studio」と「Pro Tools | Carbon」という2つのプロフェッショナル・レンジのオーディオ・インターフェースをリリースしています。どちらも1Uユニットで、フロントパネルのデザインは共通部分も多いですが、実際の2つの製品の特徴は異なります。この記事では、これらの違いを解説していきます。
MTRX Studioは、DigiLinkインターフェースを経由してHDX(またはHD Native)と接続することが可能で、音楽制作を含むさまざまな用途に適していますが、サラウンドやDolby Atmos®ワークフローを必要とするオーディオ・ポスト環境でより真価を発揮します。
また、MTRX Studio には、新たにThunderbolt™ 3オプションも加わり、ネイティブ環境下でも最大64chのオーディオ・インターフェースとして使用する事も可能となりました。
Carbonは、主に音楽制作やレコーディングのために作られており、本体に搭載されたHDX DSPを利用し、対応Pro Toolsソフトウェアとシームレスに統合することで、ネイティブ環境でのシンプルな低レイテンシーのトラッキングの問題を解決します。Pro Tools StudioまたはUltimate 2023.6を使うと、7.1.2または5.1.4のDolby Atmosスピーカー・レイアウトに対応し、最大10chまでのサラウンド・モニター・コントロールが可能となりました。
概要
MTRX Studioは、非常に有能で柔軟性の高いオーディオ・インターフェースです。アナログ、デジタルを問わず、さまざまなフォーマットでスタジオ内の他のオーディオ機器とのインターフェース機能を必要とするオーディオ・プロフェッショナルのために設計されています。完全に設定可能なソフトウェア制御のモニタリング・セクションを備えており、Dolby Atmosまでのあらゆるモニタリング環境に対応できます。
Carbonは特に音楽制作、とりわけミュージシャンやバンドのレコーディングのために設計されています。この目的を満たすI/Oにより、追加のハードウェアを必要とせずにレコーディング・セッションを実行するために必要なすべてを提供します。レコーディング規模に応じて、別売の8ch マイクプリ/インターフェース「Carbon Pre」を使用することで、最大24 chのアナログ入出力まで拡張することも可能です。
またCarbonは、Pro Tools Studio/Ultimate 2023.6でのサラウンド・モニター環境対応により、MTRX Studioと比較すると限定的ではありますが、一部ポスト・プロダクション・ニーズにも対応可能となりました。詳しくは「Pro Tools | Carbonでサラウンド」記事をご参照ください。

価格のポイント
この2つの製品は価格帯が異なり、ニーズに応じた多様なプロオーディオ市場に対応するように設計されています。MTRX Studioは、税別表示価格701,000円、Carbonは税別表示価格540,300円ですが、単純比較はできません。
MTRX Studioは、DigiLink経由でホスト・コンピューターと接続する場合、別売のPro Tools UltimateソフトウェアおよびHDXカード(またはHD Native)が必要となります。
一方、Pro Tools|CarbonにはPro Tools Ultimate永続版ソフトウェアが付属し、AVB経由でホスト・コンピューターと接続可能な、完結型のよりオール・イン・ワン的な要素の高い製品となります。
MTRX Studioには、Pro Toolsソフトウェアは含まれませんが、モニタリングのリモートコントロールを可能にするDADmanソフトウェアが付属しています。このDADmanモニタリング・ソフトウェアは、独立したアプリケーションとなっており、MTRX StudioにThunderbolt 3オプションを加えて、Pro Toolsや他社DAWソフトウェアとネイティブ環境で使用する場合も、包括的なモニタリング・コントロールを実施することができます。
コンピューターへの接続
MTRX Studioは、HDXおよびHD Nativeシステム用のDigiLinkインターフェースとして使用できます。DigiLinkプロトコルを使用してHDXカード経由でホスト・コンピューターに接続します。DigiLinkはAvid独自のオーディオ・コネクターで、プロセッシング・カードとインターフェース間のオーディオを完全にコントロールすることができます。
また、HDX搭載のDSPによって対応可能なシビアな低レイテンシー・モニタリング環境が必要ない場合、または、Pro Toolsや他社のDAWソフトウェアをネイティブ環境で使用する場合は、新たに登場したThunderbolt 3オプションを追加し、ホスト・コンピューターと直接接続することも可能です。
MTRX Studioは、macOSとWindowsの両方のオペレーティング・システムと互換性があります。

Carbonは、Thunderbolt イーサネットアダプターまたは、認定されたAVB対応ネットワーク・ポートを使用してMacに直接接続することができます。AVBはCarbonにとって重要なテクノロジーです。AVBは、専用の帯域幅の確保、正確なタイミングでの低レイテンシー・ストリーミング、インターフェース全体とPro Toolsへの32ビット・フローティング・パスを提供するイーサネット規格です。拡張に向けての柔軟性も提供しており、それによりCarbon Preを使った最大24chまでのマイクプリ付きI/Oの増設も可能となっています。
入出力
2 つのインターフェースの I/O コンプリメンツは、用途の違いを示しています。
MTRX Studioには2つのマイク・プリアンプが搭載されており、VO、ADR、フォーリーのレコーディングに最適です。また、16系統のアナログラインの入出力を備え、ADAT対応のコンバーターやマイクプリを追加するためのADAT接続端子を備えています。重要なポイントとして、MTRX Studioには64チャンネルのDante I/O用のDanteポートが搭載されています。Danteは、ここ数年の間にライブ・サウンドとスタジオ制作の両方において、標準的なデジタル・オーディオ相互接続プロトコルとなっています。様々なワークフローを可能にする多数のDante周辺機器が市場に出回っており、MTRX Studioにこのコネクターを搭載することは、現代の制作環境に統合する上で特に重要となります。
大規模なスタジオ環境で必要とされる接続性とは対照的に、Carbonは小中規模のスタジオやホームプロダクション環境のニーズを満たすように設計されています。8つのマイクプリを搭載しているので、例えば複数のパフォーマーを録音したり、ドラム・キットを収録したりすることができます。8系統のライン入出力を備えており、コンプレッサーやEQなどのスタジオ用アウトボード機器のハードウェア・インサートとしても使用することができます。また、Carbon Preを最大2台まで追加接続することで、最大24ch入出力マイクプリ搭載インターフェースとして活用可能な他、Carbon単独でもサードパーティー製のコンバーターやマイクプリアンプとの接続を容易にするために、ADATコネクターを使用して16系統の追加入力(48kHz時)も備えており、同時入力数は最大24系統(トークバック・マイクを内蔵している場合は25系統)に増加します。Carbonには4つのヘッドフォン出力があり、追加のハードウェアを導入することなく、スタジオのミュージシャンのために4つの別々のヘッドフォン・ミックスを作成することができます。
モニタリング
MTRX Studio には、驚くほど包括的なルーティングとモニタリング・セクションがあります。DADman と呼ばれるアプリケーションを使用してソフトウェア制御されており、完全にコンフィギュレーションが可能です。512 x 512 のクロスポイント・デジタル・マトリックスにより、任意のソースを任意のデスティネーションにパッチすることができます。モニタリング・セクションでは、Dolby Atmosをはじめとするあらゆるフォーマットのスピーカー・セットを必要なだけセットアップすることができます。キュー・ミックスも完全に設定可能です。任意のソースから必要なだけのヘッドフォン・フィードを設定し、どのヘッドフォンにトークバックをアサインするかなどを決めることができます。すべてのモニター機能は、Avid S6、S4、S1、DockからEUCON経由でコントロールできるので、ユニット自体を別のマシンルームに設置することも可能です。最後に、スピーカーEQとディレイ処理を内蔵しているので、ルーム・コレクションEQやディレイをモニタリング・パスに適用することができます。

Carbonは、レコーディング・セッションを実行するために必要なすべてを提供します。モニタリングはインターフェースに組み込まれており、フロントパネルからコントロール可能です。3セットのステレオ・スピーカー、DimとCutコントロール、4つの独立したヘッドフォン出力に対応しています。トークバック・マイクはフロントパネルに内蔵されています。 Carbonはデスクトップ・インターフェースとして設計されており、コントロールにアクセスしやすいように配置されています。また、Pro Tools Studio/Ultimate 2023.6以上を使用する事で、最大10ch出力までモニター・コントロールすることが可能となっています。
Carbonとポスト・プロダクション
ポスト・プロダクションのワークフローで Pro Tools | Carbon を使用することを妨げるものは何もありませんが、ポスト・プロダクション環境には適さない幾つかのケースがあります。Carbonは音楽制作用に設計されているため、ステレオ・モニタリング機能を備えており、Pro Tools Studio/Ultimate2023.6以上を使用することで最大10chまでのサラウンド・モニタリング機能を備えることができ、一般的な5.1ch, 7.1chには対応することができましたが、Dolby Atmosスピーカー・レイアウトへの対応に関しては、5.1.4chまたは7.1.2chと、MTRX Studio(9.1.6chまで対応可能)と比較すると、やや限定的です。もう1つの重要な要素は、映像に対して作業する場合、映像がオーディオに正確にロックされていることを確認する必要があるということです。これを保証する唯一の方法は、フレーム・エッジ・シンクを使用することです。フレーム・エッジ・シンクは、ビデオ・リファレンス・シンク・ソースから派生したもので、フレーム・エッジ・シンクをPro Toolsに取り込むには、Avid SYNC HDが必要です。SYNC HDはHDXカード(またはHD Native Thunderboltインターフェース)に直接接続するため、オーディオ・インターフェースとしてCarbonを使用している場合、フレーム・エッジにロックする方法はありません。
MTRX Studioと音楽制作
MTRX Studioは音楽制作に最適ですが、複数のミュージシャンをレコーディングする場合は、ライン・インプットに外部マイク・プリアンプを接続し、ラインアウトまたはDanteを使用してキュー・ミックス用の追加ヘッドフォン・プリアンプを接続する必要があります。さらに、Carbonへの搭載を機に開発されたハイブリッド・エンジンのワークフローは、Pro Tools Ultimate、HDXカード、MTRX Studioの組み合わせでも活用可能ですので、バーチャル・インストゥルメントのようなネイティブ処理を含む音楽プロジェクトにおいて、HDXシステムの柔軟性を高めます。
おわりに
詳細については、比較シートをご覧いただき、Avid.comのMTRX StudioとCarbonをご覧ください。
※本記事は、2021年1月5日に掲載された「Pro Tools | CarbonとPro Tools|MTRX Studioの比較」に、2023年6月時点の製品情報を加えたものです。
各製品の最新情報は、Avid Webサイトの該当製品ページを併せてご参照ください。
| Dolby Atmosは、Dolby Laboratoriesの登録商標です。 Thunderboltは、Intel Corporationまたはその子会社の商標です。 Danteは、Audinate Pty Ltdの商標です。 |